アキラです。収納家具専門店に入社して2年。収納プランナーの仕事というのは、ひと言でいえば、住まいと暮らしがますます好きになるような収納プランを提案すること。

仕事も慣れてきたし、接客は得意だと思うし、自分でいうのもナンですが、期待のルーキーってとこでしょうか。

さてさて、明日は新商品の販売促進会議があります。今回の新商品は小さな収納。大切なコレクションをキレイに収めてよろこびを深め、飾って眺めて好きなものを楽しむ。いままでの当店の定番とは違った商品を打ち出そうとしています。

このコレクション収納の使い方のアイデア出しをしようというのが、明日の会議のテーマです。ギター好きの僕は、ギターのアクセサリーをキレイに並べたり、スコア専用のキャビネットをつくるとか、 なかなかと思えるアイデアが浮かんでき ます。

そういえば、腕時計を10個以上持っている友だちがいたり、タブレットばっか使っているのに万年筆に凝ってる知人もいます。ガンダムのフィギュアをケースにかざったりN ゲージの車両を集めているとか。

とどまることを知らない僕のアイデア!なんて悦にひたっていると、脇を通りかかったM子先輩。

「すごいね、アキラくん。アイデアマンじゃない」

「そうすかね、こんなもんじゃないですか」と、たぶんドヤ顔の自分を自覚します。

「でもね、視点がおんなじだし、その視点が新鮮じゃないってとこがいまいちかな。まだ考える時間はあるからね」と。

女神のような笑顔でおっとりした口調なのに、言ってることは果てしなく厳しい。そして、正しい。仕事に関してはいちばんおっかない先輩かも。

奈落の底に突き落とされた気分のまま、自宅に向かう総武線に揺られながら、アイデア貧困、アイデア貧困、アイデア貧困……と、自信喪失。いや、何か思いつくはず。思いつけ、自分!

「おかえりー」と、帰宅した僕を迎えてくれるそめちゃんこと僕の奥さん。 仕事の落ち込みを悟られないようにするものの、

「アキラくん、悩み顔してるよ。ご飯の前に一杯飲もうか。この間もらった獺祭♪」と言われて、僕は今日の出来事をそのまま話します。

「誰でも考えることっていうのは、正しいってことでもあるからね。落ち込むことはないよ。立派なコレクションの立派な収納って、いいじゃない。でも、私みたいにコレクションの趣味がないとピンとこないかもね。

私だったらそうだな、カラフルでちっちゃい収納があったら、トイレにトイレットペーパーを飾る棚とか、キッチンの壁にスパイスラックがほしいかな。そういうの、自分も嬉しいし、友だちが家に来たときにちょっと自慢できるじゃない」

すごいよ、そめちゃん。目からウロコ。 気分すっきり、頭脳くっきり。アイデアが浮かんできそう。根拠はないけど自信回復!

「そめちゃん、晩ご飯にしよう」

そうか、小さな収納をもっと小さく使いこなすには。あっ、小さな収納で大きなプランもいけるかな。廊下とか収納を置かない場所に置く収納とか。にわかにわき出すアイデアの泉。 元気、勇気、前向きで明日の会議に参加できそう。

そめちゃん、明日は1時間早く起こしてください!」

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